太陽光発電の「電圧抑制」と「出力抑制」について解説!導入・運用時の注意点
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太陽光発電の「電圧抑制」と「出力抑制」について解説!導入・運用時の注意点
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太陽光発電の「電圧抑制」と「出力抑制」について解説!導入・運用時の注意点

太陽光発電には「電圧抑制」と「出力抑制」という2種類の抑制が関わります。抑制によって発電量が下がり、売電収入に影響を及ぼすため注意が必要です。それぞれの抑制のリスクや対策方法を知りたい方もいるのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では、電圧抑制と出力抑制について解説します。抑制の仕組みや原因、注意点が分かれば、太陽光発電をより活用できるでしょう。

 

太陽光発電で注意するべき2つの「抑制」

太陽光発電を活用する上で注意が必要なのが、2つの「抑制」です。リスクを抑えて効率的に運用するためにも、電圧抑制と出力抑制という2つの抑制について正しい知識を身に付けるとよいでしょう。ここでは、電圧抑制と出力抑制について解説します。

 

電圧抑制

電圧抑制とは太陽光発電の電圧が抑制される現象です。電圧抑制を行うと発電量が減り、売電量も減少して収入が下がるという弊害があります。

 

発電した電力のうち余剰分が電線に流れ、電力会社へ送電するのが売電の仕組みです。太陽光発電の電線と公共の電線の接続点の電圧は95V~107Vの範囲内でなくてはならないと電気事業法で定められているため、パワーコンディショナには電圧の制御機構が組み込まれています。この制御機構が作動した状態が電圧抑制です。

 

接続点の電圧が上限値の107Vに近付くと、電圧が上昇しないように電圧抑制を行います。ただし、発電量の低下に伴い売電量も減るため、なるべく電圧抑制を避けるのが効率良く運用するコツといえるでしょう。

 

出力抑制

出力抑制とは電力会社が太陽光発電の電力の買い取りをコントロールすることをいいます。電力は使用量と供給量のバランスを保たなければならないため、消費できない電力の買い取りを停止し、需要に合わせて発電設備の出力を制御するために必要な措置です。

 

2015年の再生可能エネルギー特別措置法の改正によって、条件次第では家庭用発電設備も出力抑制の対象に含まれるようになりました。ただし、住宅用太陽光発電の電力は自家消費の余剰分を売電する仕組みであるため、出力抑制の対象になることは少ないでしょう。

 

一方、出力が大きな発電設備を導入して全量売電する場合、出力抑制の対象に含まれやすくなります。

 

太陽光発電で「電圧抑制」が起こる原因

電圧抑制は太陽光発電を運用する上でデメリットが多いため、可能な限り避けたい事態です。しかし、原因が分からなければ対処は難しいでしょう。ここでは、電圧抑制の原因となりやすい2つのケースについて解説します。

 

太陽光発電より電線内の電圧が高い

電気は電圧が高いところから低いところに流れるため、太陽光発電の電力を公共の電線に送電するには、電線内の電圧以上に住宅の電圧を上げる必要があります。したがって、自宅周辺の電線内の電圧が高いと、住宅の電圧が上がり過ぎて電圧抑制が起こりやすくなるでしょう。

 

電線内の電圧が上がる原因として考えられるのは、周辺環境による影響です。電力消費量が多い商業施設や工場が休みだったり同じタイミングで一斉に売電量が増えたりすると、周辺エリアの電線内の電圧が高くなります。

 

自宅の配線問題

配線ケーブルは断面積が小さく長さが長いほど、電気抵抗が大きくなって電圧が高くなります。つまり、電圧が上がる要因のひとつは、自宅と電線をつなぐ引き込み線が細いという配線の問題です。他にも、電柱に設置してある変圧器との距離が遠い場合や接続点とパワーコンディショナの距離が遠い場合も原因として考えられます。

 

特に、パワーコンディショナに接続する配線内の電圧が高くなると、電圧制御機構が働くため注意しましょう。接続点の電圧が規制の範囲内でも、電圧が抑制される場合があります。

 

「電圧抑制」が起こると太陽光発電の売電量が減ってしまう

電圧抑制の最大のデメリットは、太陽光発電の売電量が減ることです。電圧抑制が行われると発電量が減り、その分売電可能な電力量も少なくなって売却益も減少します。売電収入を期待して導入した方にとっては大きな問題です。

 

周辺環境が原因の場合は個人の努力では解決できませんが、自宅の配線に問題があれば、解決できるケースもあります。頻繁に電圧抑制が起こる場合は専門家に相談して、原因を特定するのが解決への第一歩です。

 

太陽光発電で「電圧抑制」が起こったらどうする?

太陽光発電を導入して売電収入を得ようとしても、電圧抑制が頻繁に発生すると想定通りの収入は見込めません。このような事態を避けるには、正しい対処法を知る必要があります。いざというときに備えて、電圧抑制の確認方法や対処法をチェックしましょう。

 

電圧抑制の確認方法

電圧抑制が起きているかもしれないと気付いたときは、できるだけ早く発見し、対策する必要があります。パワーコンディショナのモニターや表示ランプに電圧抑制を示すエラーが出ていないか確認しましょう。

 

システムによってはモニターに発生時刻が表示されるものもあります。いつから電圧抑制が起きていたのか把握できるため、解決に役立てられるでしょう。

 

電圧抑制が起こった場合の対処法

電圧抑制が発覚したときの対処法として、管轄の電力会社に連絡して電圧を調整することが挙げられます。電力会社の調査で周辺の電圧が高いと判断されれば、変圧器を調整して抑制が起こりにくくしてくれるでしょう。

 

パワーコンディショナの電圧設定値を上げるのもひとつの方法です。他にも、太い引き込み線に変更する、引き込み線を短くするために中継の変圧器を設置するといった対処法があります。

 

ただし、上記の改善策にかかる費用は自己負担になることが多いため、費用とメリットを天秤にかけて実施するかどうか判断しましょう。

 

太陽光発電で「出力抑制」が適用される2つのルール

電力会社によって電力の買い取りをコントロールする出力抑制は、既定のルールに沿って実施されます。以前は30日までであれば無償で出力抑制できる30日ルールが適用されました。ここでは、今後導入する予定の方が適用される2つのルールについて説明します。

 

1.360時間ルール

電力会社は年間360時間までであれば、無償で出力抑制できるというルールです。したがって、年間360時間以下の出力抑制に対しては、発電設備は補償を受けられません。360時間を超えた分に関しては補償の対象です。

 

以前は500kW以上の発電設備が対象でしたが、2015年のFIT制度改正に伴って、現在は500kW未満を含む全ての太陽光発電が対象になりました。

 

2.指定ルール

指定ルールは30日ルールや360時間ルールと異なり、一定時間を超過しても上限なしに無償で出力抑制できます。要請できるのは国から指定を受けた一部の電力会社のみであるため、指定ルールという呼称が定着しました。国から指定を受けている指定電気事業者は以下の7社です。

 

・北海道電力

・東北電力

・北陸電力

・中国電力

・四国電力

・九州電力

・沖縄電力

 

エリア内の電力供給量が需要を上回る、あるいは上回ると見込まれるときに、指定電気事業者は事実上制限なしで出力抑制を要請できます。

 

適用ルールは電力会社によって異なる

出力抑制で適用されるルールは、電力会社の接続可能量によって異なります。また、同じ電力会社でも設備の規模ごとに適用ルールが変わるため、注意しましょう。例えば、東京電力エナジーパートナーの場合、10kW未満の設備と10kW以上50kW未満の設備は出力抑制の対象外です。一方、50kW以上の設備は360時間ルールが適用されます。

 

また、指定電気事業者の東北電力や九州電力で適用されるのは、全ての規模で指定ルールです。自宅があるエリアを管轄する電力会社のルールを確認するとよいでしょう。

 

太陽光発電の「出力抑制」にリスクはある?

出力抑制が行われると、電力会社が太陽光発電の電力を買い取ってくれません。売電量が減り、シミュレーション通りの売電収入が得られなくなるリスクが不安な方もいるかもしれませんが、現時点で出力抑制が実施されたエリアは九州電力のみです。

 

また、出力抑制には優先順位があります。制御しやすい火力発電が最も優先順位が高く、地域への送電、バイオマス発電と続き、4番目に来るのが太陽光発電や風力発電です。優先順位が高くない太陽光発電に関しては、出力抑制のリスクはあまり考えなくてもよいでしょう。

 

太陽光発電における「出力抑制」への備え方

出力抑制は売電収入の低下を招くため、機会損失を避ける対策をする必要があります。出力抑制への備え方に関する知識を身に付けて、太陽光発電を効果的に運用しましょう。ここでは、代表的な対策としてエリア選びと補償制度について解説します。

 

太陽光発電設置エリアを選ぶ

将来的な展望を視野に入れるのであれば、出力抑制に積極的ではないエリアで太陽光発電を運用しましょう。現状では九州電力のみが出力抑制を実施した実績があるため、九州電力以外のエリアを選ぶことをおすすめします。

 

また、出力抑制の適用ルールは地域ごとに差があり、導入する設備の規模によって有利な地域と不利な地域があるでしょう。それぞれのエリアを管轄する電力会社の適用ルールに目を通して、自分に有利なエリアを選ぶことで出力抑制に備えられます。

 

補償制度に加入する

出力抑制保険に加入するのも効果的です。保険に加入すれば出力抑制時間に応じた売電収入が補償されるため、安心して太陽光発電を運用できます。

 

ただし、出力抑制保険に加入すると保険料を支払わなければなりません。保険料は保険会社によって異なりますが、年間6万円程度です。出力抑制が起こらない場合や起こっても時間が短い場合は、補償される金額より保険料として支払う費用のほうが多いことが考えられます。加入するメリットと保険料をよく比較して加入を検討しましょう。

 

まとめ

太陽光発電には電圧抑制と出力抑制という2つの抑制があります。電圧抑制は対処できる場合もあるため、頻発するときは業者に相談するとよいでしょう。一方、電力会社が実施する出力抑制では、さまざまなルールが適用されます。現状、実施された実績はほとんどありませんが、万が一の事態に備えることが大切です。

 

リベラルソリューションでは、太陽光発電の運用に関するサポートを行っています。導入や運用について疑問に感じることがあれば、お気軽にお問い合わせください。オンライン面談も実施しています。